「センシング技術」×「データサイエンス」
センサ,あるいはセンサデバイスはあらゆる物理的・化学的な事象を電気信号に変換する部位の総称です.スマートフォンから大規模工場,果ては人工衛星まで様々な機器に搭載されています.一方でそこから何か知見を得たり,サービスを展開しようとする時,センサ単体では物理現象等を電気信号にA/D変換した値を提供するのみで,我々は得られた観測値に何らかの統計モデリングや機械学習モデルを組み込むことによって,初めて目的とする情報を得ることができるようになります.
センサデバイスの生産は,日系会社の世界シェアが5割を超えており,日本が強い分野と言えます.一方でそれをサービスに展開する技術についてはあまり強くなく,当研究室ではその分野での社会的役割を担える人材や研究者の育成を目的としています.
「センシング技術」×「データサイエンス」を考えた時,難しい問題が幾つかあります.
- リアルタイム性
センシングデータは24時間365日計測を続けることが多いです(このような常に計測されるデータをストリームデータといいます).この時,得られた情報を元に常にフィードバックを行うためには,ある程度短い時間間隔で情報更新を行う必要があります.このようなリアルタイム性を達成するためには,計算コストやフィードバック間隔などを常に意識しながら開発を行う必要があります(例えば一人暮らしのご老人の見守りシステムを考えた時,ある程度のリアルタイム性が要求されます.昨日体調が悪く家で倒れていたということがわかってもシステム上意味をなしません) - 精度
リアルタイム性を意識した時,短い時間間隔で処理を行う必要があります.この時使えるデータの量は限られており,少ないデータ量から,データの前後関係なども考慮しつつある程度の精度を達成する必要があります.ストリームデータはビッグデータの一種に数えることができますが,使用可能なデータ量は常に意識する必要があります. - 計算資源
センシングデータはIoTセンサネットワークと一緒に議論されることが多いです.この時ネットワークの輻輳などを起こさないために,ある程度末端のデバイスで計算を行う必要があります(エッジコンピューティング).この時使えるエッジデバイスの計算性能は,導入コストなどを考えるとそんなに高くないことが多く,アルゴリズムの計算コストなども考えながら開発を行う必要があります.
このような問題を考慮し,研究室では社会の諸問題を解決しうる様々なサービスの開発を実施しています.